新空手で数々の優勝した実績を誇る及川道場の数島大陸は、同門の滉大、有井渚海をも超える逸材といえるだろう。プロ5戦目となった今年7月のRISEでは急遽代打出場にも関わらずラジャダムナンスタジアム王者の竜哉・エイワスポーツジムと引き分けたもののダウンを奪い、11月のRISEビッグマッチでは、ここでも急遽出場ながら二階級上のNJKF王者・甲斐元太郎から3度のダウンを奪った末にKO勝ちを収めた。これまで8戦しダウンを取った数はなんと13回!軽量級ながら爆発的な攻撃力で付いたあだ名は“次世代型クラッシャー”!2022年も注目の超新星を紹介する。
取材・写真:安村 発
新空手出身のムハイ☆モンスター
──まず数島選手の格闘技歴から教えてもらえますか。
数島 5歳の時に家から近かった及川道場の前を通るたびに、道場生の道衣を着ている姿がカッコよくて興味が湧き、実際にやってみたらメチャ楽しくて、すぐに入会を決めました。及川道場の練習体系で、小学生までグローブ空手をし、中学生からキックボクシングの練習に切り替わり、17歳の時にRISEでプロデビュー(2020年9月20日)して今1年経ちました。
──小さい時はどういう性格の子でした?
数島 俺が俺がというような目立ちたがり屋でした(笑)。
──兄弟はいます?
数島 4人兄弟で僕が長男で妹もキックをやっています。まだアマチュアなんですけど、結構ベルトを獲ったりして女子の中でも有望な方だと思います。
──ご自身の同時期と比べてセンスはどうですか?
数島 僕の場合は才能がなかったのでとりあえず及川先生から言われたことをひたすら数をこなして身に付けたというのもあり、それに比べたら妹は教わったことの吸収は早いかもしれません。僕は道場だけでなく、家にいる時も練習していたので、誰よりも数はこなしてきた自信はあります。
──アマチュア時代から成績はよかったのですか?
数島 最初は全然勝てなくて一回でも勝ったら両親からめちゃ褒められるぐらいでした。6年生ぐらいの時に人生の分岐点となる、アマチュア大会があり、及川先生から「一緒に頑張ってベルトを目指してみよう」と言われて先生に言われたメニューを頑張った結果、ベルトを獲ことができ、そこからどんどん勝てるようになりました。アマチュア時代は新空手でトータル的に10回ぐらい優勝経験があります。
──結果が出せなかった時期に辞めたいと思ったことはないですか?
数島 元々自分が好きで始めたことだったので辞めたいと思ったことはないですね。試合では勝てなくても毎回頑張って出場するといったことの繰り返しで、嫌になることは特にありませんでした。中学、高校に進学する時に部活などが理由で辞める人もいますが、僕は昔からキックを優先させていたので特に問題はありませんでした。
──キックを優先させていると女性とのお付き合いも難しくなりそうですね(笑)。
数島 そうなんです。キックボクシングが1番に来てしまうので彼女ができないんですよ(笑)。でも12歳ぐらいの時に彼女がいて、キックをあんまり練習しなくなった時期があったんです。ムエタイのアマチュア大会の大きなタイトルを懸けた大会があり、その開催一カ月前にフラれて、自分は何をやっていたんや!? とふと我に返って慌ててめちゃくちゃ頑張ってタイトルを獲った危ない時期もありました(笑)。
──もしそこでフラれていなかったら交際も続いてキックを辞めていた可能性も?
数島 それはあったかもしれません(笑)。今思えばあそこでフラれてよかったです。ちなみに突然別れ話を言われたのでフラれた理由が分かりません(苦笑)。もうそれからは自分を見失うのが怖いので彼女を作るのも怖いのですが、今は彼女募集中です(笑)。
──数島選手もそうですけど、滉大選手、有井渚海選手と及川道場から次々と有望選手が輩出され、ジュニア選手も新空手の大会で優勝するなど小さい頃から戦績の良い子が多いですよね。道場の強さの秘密を教えて下さい。
数島 先生の指導ももちろんありますし、ジムの選手みんなで話し合ってアドバイスし合っていて、〝一人はみんなのために、みんなは一人のために〟という言葉があるように、サウスポーの相手の試合が決まったらサウスポーのジム生がスパーに付き合ったり、相手の映像を観て「こういう技が当たるんちゃうか?」と、みんなで意見を出し合う話し合いをしています。それを他のジムでやっているかは分かりませんが、それだけ話し合ってできるのはなかなか信頼関係がないとできないことなので、そういうところが及川道場生の強さにつながっているのかなと思います。まだアマチュアでもいつプロデビューしてもおかしくないポテンシャルの子はたくさんいて、僕にとってもいい練習相手になるので彼らの今後が楽しみです。
──ご自身もアマチュア時代は新空手で何度も優勝していたことで、いつデビューしてもプロの世界で通用する自信はありました?
数島 自分はそこまで自信はなく(苦笑)、めちゃくちゃプロになりたいとは思ってなかったんです。とりあえず身近には渚海がいたので、渚海が獲ったタイトルを全部獲っていくことを目標にして、渚海が僕よりも1年早くプロデビューして、大きな舞台に上がっているのを見ることが多くなった時に『俺もプロになりたい』と思うようになりました。
──なぜ有井選手をそこまで意識していたんですか?
数島 渚海は1つ年上で、知名度もあってルックスも良くて注目されていて、同じぐらいの時期に及川道場に入会して同世代の僕としては僕の上で渚海が活躍している姿を見ていると、いい意味で悔しさがありました。渚海は全然そう思ってないと思いますが、僕はライバルとして見ていたので「いつか抜いてやろう」という気持ちが常にありましたね。
──11月14日のRISEでは当初、有井選手が出場予定でしたが、急遽、練習中の怪我により欠場。代替選手として数島選手が出場することになりました。勝利することに意地がありました?
数島 そうですね。本人も出たいというのもあったし、僕が出ることで複雑な気持ちだったと思いますが、僕としてはこんなチャンスは滅多にないですし、いつ試合のオファーが来てもいいように常に考えながら練習しているので準備は万全です。先日はまさか自分のジムから欠場者が出るとは思わず、相手も二階級上の選手で代役の話が来たのも大会5日前だったので正直怖いという想いがあったのですが、ここで大勝ちしたら渚海よりも上にいけるのかなと思い、それならやってやろうという気持ちになり、先生に「やります」と即答しました。
──試合では1Rに左ハイキックと右フック、2Rには左フックと左ハイキックで合計4度のダウンを奪ってKO勝ちでした。これまで8戦して、ダウンを取った数は合計13回もあります。軽量級でありながらなぜそこまで強打を打てるのですか?
数島 元々、あそこまで強くは打てなかったのですが、先生に言われた課題を修正するメニューをできるまでひたすらこなしていたら、自然にパワーが付きました。これといって筋トレをしたりはしていません。今回は急遽決まった相手だったのでちゃんとした対策はできなかったのですが、常日頃からやってきたことが試合で出て、ダウンを取れたので練習でやってきたことは嘘はつかないなと改めて感じました。
──左ハイキックでも見事なダウンを奪いました。あれも練習していたもの?