8月10日の『RIZIN.23』で扇久保博正(パエストラ松戸)に勝利し、悲願の第3代RIZINバンタム級王者となった朝倉海(トラ―フォース赤坂)。その1ヶ月後、9月27日に開催された『RIZIN.24』にも連続参戦し、元パンクラス・ライト級王者の昇侍(トイカツ道場)にも初回TKOで勝利し圧倒的な強さを見せつけた。その強さと成長の裏側と今後のビジョンについて、扇久保戦直後のインタビューから探ってみる。※第3代RIZINバンタム級王者 朝倉海「もっと上を目指す。世界一を目指しているのでまだまだです」<全文掲載①>からご覧ください。
マネル・ケイプに2R TKOで敗れた大晦日から見事な復活を果たし、RIZINバンタム級王者となった朝倉海。その裏には敗戦と向き合うことで自身の弱点をあぶり出し、成長に繋げた7ヶ月の月日があった。己をよく知り、考え、繰り返す——海が説く“強さの作り方”。そして、そんな海を引き込んだ格闘技の魅力、「まだスタート地点」と話す今後についても聞いた。
取材・文_長谷川亮 撮影_ AP,inc.
──KAIチャンネルでも海選手が指導をする風景が映っていましたが、やはり指導の時も会員さんが自分では分からないところや欠点を指摘してあげるのでしょうか。
海 そうですね、そういうのも言いますし、あとは考えないとダメっていうのは常にみんなに言いますね。ただガムシャラにやってもよくなくて、練習以外の時間も考えないとダメだよみたいな話はよくします。あと、覚えたことって絶対忘れちゃうんですよね。なのでメモとかを取った方がいいと思います。せっかく覚えたのに忘れちゃうっていうのは効率が悪いので、まずは覚えたことをメモして、僕の場合だったら練習に行く前にそのメモを見返してその練習で試すとか、練習帰りに習ったことを復習するとか。そうやって練習以外の時間もしっかり考えることが大事かなと思います。やったことを考え直して、それを今回の練習で試そうとかって考える時間を作るのが大事だと思います。
──やったことを改めて考えたり、それをまた試してみるということが大切なのですね。
海 やっぱり考えている人は強くなっていくし上達しますよね。スポーツは何でもそうでしょうけど、頭を使うというか本当に考えないと強くなれないと思います。自分も反省したり新しいことを学ぼうとしたり、そういうことの繰り返しで強くなってきたと思います。
──練習内容を振り返ったり次の時はこうしようと考えるのは、海選手はもう習慣でやっているのですか?
海 そうですね。あとは僕が今もジムで指導をやってる理由もそれの1つで、僕もいろんなところで練習していろんなことを吸収してるんですけど、僕も人間なんで習ったことを忘れるんです。でも僕がそれを教えることによって習ったことを確実なものにできるんです。自分が完璧に理解してないと、人に教えられないんですよね。教えるのって本当に理解していてちゃんと説明できないとできないので、そのために自分も勉強しますし、教えることが僕の勉強にもなっているんです。
──では、指導も海選手の練習の一環になっているといいますか。
海 そうなんですよね。ジムで教えることによって僕も勉強しているんです。今はジムでの給料がなくても自分で生活できますけど、指導をすることによって得られるメリットって本当にたくさんあるので。
──その時間で体を休めたりすることもできると思うのですが、それでもやっているのはやはりそれだけのことがあると。
海 そうなんです。休むっていう時間よりも全然大切な時間なんです。練習でもあり刺激ももらえるんですよね。まずトレーニングに来る人ってそもそも意識の高い人じゃないですか。そういう人たちの強くなりたい・体を引き締めたいとか、そういう気持ちや頑張る姿って僕にもすごく刺激になるんです。やっぱり僕も負けていられないっていうのがあるし、そういう姿を見ることによって僕も頑張れるというか。そういう刺激にもすごくなっているんです。
──そういう環境に身を置くことで自然と自分もそういう気持ちになれるのですね。
海 ジムに来ないで家でゆっくりしてもいいんですけど、そうやって過ごすよりジムに来た方が絶対プラスになることが多いです。
──意識面から自然と強くなれる環境が作り上げられているのですね。
海 そうなんです、自分で作っているんです。今後もこの環境で変わらずやっていきます。
──ではチャンピオンとしての今後についてはいかがでしょう?
海 やっぱり堀口選手が強いと思うし、そのカードが組まれたら一番盛り上がると思うのでそれをやりたいですよね。あとは堀口選手の怪我の状況がどんな具合か分からないので、無理して出てきてほしくないなっていうのはあります。無理して出てきてもらってそこで対戦して、それで勝っても嬉しくないし、やっぱりやるなら100%の状態で。
──今回は憂流迦戦のように、非常に強さを感じさせる試合内容でした。
海 でもここで調子に乗らずにというか、しっかり気を引き締めないといけないなと思います。やっぱりバンタム級でも強い選手がたくさんいますし、僕もまだ完璧ではないので。強くなっているのは自覚していますけど、まだまだやらなきゃいけないことがあるし、もっと強くできる部分がたくさんあります。チャンピオンになったここがゴールじゃないし、世界中にはもっと強い選手がいて、そういう選手に勝つことが大事なので。もっと上を目指しています。
──海選手のゴールというのはやはり世界一?
海 ずっと言ってますけどそこなのでまだまだですね。それはもうプロで出始めた頃からそこしか目指していなかったです。やっぱり海外のベルトに挑戦したいし、RIZINはベラトールは交流できると思うので、だからベラトールのベルトは狙っていきたいです。そこから切り開いていくのがいいかなって。あとはやっぱり格闘技業界を盛り上げるっていうのが僕の使命というか。自分がいま格闘技を背負っていると思っているので、そこを広めることをやるのがチャンピオンだと思ってます。
──海選手は身体能力検査を行い、かなり高い結果が出た動画がありましたが、他のスポーツへ進もうという気はなかったのですか?
海 中学の時はバレーをやっていて、もう中1の時には3年生の中に入ってレギュラーで試合に出ていたので結構上手かったと思うんですけど、やっぱり何て言うか、チームプレーっていうより個人でやりたいなっていうのがありました。自分の実力で勝負したいというか。本気で好きにはなれなかったんです。
──これまで今の格闘技のように本気で打ち込めるものはなかった?
海 自分で言うのはアレですけど、どのスポーツをやってもちょっと時間を掛ければ人並み以上にできるようになるんです。でも飽き性で、なんかすぐ飽きが来るんです。
──すぐに何でもできてしまうため、見切りが早いのかもしれないですね。
海 そうなんですよ、突き詰めるまで行かないってなっちゃって。バク転とかも小学生の時、兄貴と一緒に「カッコいいからやりたいね」ってなって、家で布団を敷いて3分ぐらい練習したらできました。それで次の日学校で女の子が見てるところでやって見せびらかして(笑)。僕基本的に何事にもあまり恐怖心がないんです。恐怖心がなければ大体のスポーツはすぐに上手くいくんですよ。
──恐怖心が邪魔をしていると。
海 そうです、そこが邪魔をしているので。スノボーとかも立って滑るだけなんですけど、実際上に立って見たらほんと90度ぐらいに見えるから怖いじゃないですか。でも、僕は初心者だけどいきなりできたんです。怖くないから。もともと体のバランスがいいっていうのはあるんですけど、恐怖心がないっていうのは強いと思います。
──何でもすぐにできてしまうからこそ、なかなか本気になれるものがなかったんですね。
海 いろんなものをかじって大体できるようになったら〝もうこっちの方が面白いな〟って別の方に変わっちゃったり、そういう感じだったんですけど、そこで格闘技に出会って初めて本当にハマったというか。もうメチャクチャ面白いなと思って、全てが刺激的でこれを超す刺激はないし、それが格闘技だったんです。
──では、格闘技に関してはすぐに飽きてしまうことがなかった?
海 そうです、だから本気で打ち込めているし、ここまで続いて、ここまで来れたんだと思います。だから格闘技には本当に魅力があるし、本当に好きだからこそたくさんの人に知ってもらいたいし、広めたいと思っています。
──それだけの奥深さと魅力とが格闘技にはあると。海選手の試合を見てその魅力に目覚め、格闘技を始めてくれる人が増えるといいですね。
海 それが一番嬉しいですね。本気で試合とかを目指さなくてもフィットネス感覚でできますし。
──それでは最後に、ファンの方へのメッセージをお願いします。
海 まずは本当に応援ありがとうございました。あとはここからが僕自身スタートだと思っているので、まだまだ強くなるし、本当に世界のトップを目指して、RIZINという舞台をもっと世界的価値のあるものにしたいなと思います。
Kai Asakura
1993年10月31日、愛知県出身
身長172㎝、体重61.0㎏
第3代RIZINバンタム級王者
元THE OUTSIDER 55-60kg級王者
トライフォース赤坂所属