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「自分ができていないことを積み重ねて、そこで初めて筋肉がついていく」=筋肉マニアにして世界王者・鈴木雅

ボディビルディング=人間が世に映し出す、動物界で最も美しい肉体美の表現のことだ。そして、その頂点を極められる者は、絶え間ない努力と、それを実行しようとする素質が相まって生まれてくるものであり、それを可能とした者が初めて肉体芸術の極意を実感できる。だが、何も素質だけが全てではなく、誰よりも頑張ろうとする努力、過去の自分を超えていく努力、リスペクトする気持ちがあれば、不可能な話ではない。全ては努力によって改善と向上しようとすることが不可欠である。今回から紹介するのは、ナチュラルボディビルディングの最高峰を極めるべく、鍛錬を怠らない男たちをお見せしよう。

取材:藤本かずまさ 撮影:北岡一浩

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「私は“トレーニングで身体を変えたいマニア”なんです」=2016年ボディビル世界王者・鈴木 雅

――本日は肩のトレーニングを拝見しました。

鈴木 種目自体は、以前とほとんど変わっていません。最近、種目はそれほど変える必要はないんだということを実感しています。それは野球のピッチャーで例えると、種目を変えるのはオーバースローからアンダースローに変えるようなものです。

――投げ方そのものを変えるということですか。

鈴木 同じオーバースローでも、ちょっとしたポイントを変えるだけで球速などは変わってくるものです。トレーニングで言えば、今まで弱点だった部位、強度を上げられない、負荷が逃げてしまう部位などは、種目や方法論などに問題があったわけではなく、そもそもの体の動かし方が悪かった可能性があります。私の場合、正面からプレスするような動きや下から振り上げるような動きをすると、骨盤が前傾して体が開いてしまっていたんです。それによって負荷が抜けたり、腹横筋ばかり稼動してウエスト周りが太くなったり、首に負担がかかったりしていました。

――まさに「アップデート術」連載で説かれていた部分ですね。

鈴木 肩のトレーニングでは、特にサイドレイズなどを行うと首に大きな負担がかかっていました。骨を正しいポジションに調整したり、体が開くのを抑えたりすることで、かなり負荷が抜けづらくなりました。プレス系種目も以前よりも押し切れるようになりました。肩の前や胸、腹筋は改善されてきたと思います。また、ケガもしなくなりました。苦手な部位ほどケガをしやすいんです。今は首も痛くありません。

――その種目のための動きができるようになってきた、ということですね。

鈴木 すると、必然的にベーシックな種目に絞られてくるんです。種目を変えると、その動きに慣れるまでに時間がかかり、それ自体がロスになってしまいます。まず考えるべきは、自分の体がどうなっているのか。どの筋肉が使えていて、どの筋肉が使えていないのか。以前よりもそういったことが把握できるようになったので、一つひとつ改善しながら楽しくトレーニングを行っています。

――トレーニングを拝見して、対象筋に丁寧に負荷を乗せているという印象を受けました。

鈴木 精度は増したと思います。例えばサイドレイズの動作で補助筋となる僧帽筋や腕橈骨(わんとうこつ)筋は力が強いです。それらの筋肉を使うと三角筋への刺激は弱くなります。つまり、肩の動かし方を考えた場合、肩関節が適切なポジションにないと、サイドレイズで三角筋に効かせることは難しくなります。

――確かに、サイドレイズで三角筋を刺激するのが難しいという声はよく聞きます。

鈴木 肩を落とした状態や内転した状態で肩関節を動かそうとすると、絶対に僧帽筋が働きます。なので、サイドレイズでは「鎖骨を横に伸ばす」ようにします。テクニックとして肩甲骨をを開くという人もいますが、それはインピンジメント症候群を起こす危険性も増します。日常生活でどのような動作のときに三角筋を使うかと言えば、遠くに置かれたものを腕を伸ばして掴み取ったときなんです。つまり、上腕骨が体から離れたときに使うんです。そのときは肩鎖関節が支点になります。そのポジションで負荷を乗せて、その負荷が抜けない軌道で動かせば、三角筋をしっかりと刺激するサイドレイズの動作になります。

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