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3セットを超えるセット数ではトレーニング効果が頭打ちになる?【前編】

「軽重量・軽負荷でも筋肥大効果が得られる」というセオリーは、最新の研究成果と思われがちですが、実は50年前から採り入れられていたのをご存知ですか?研究により解き明かされたトレーニングセット数の限界点があることを今日は解説します。

文:IM編集部

トレーニング方法の当たり前がこの10年で刻々と変化

現代のトレーニング方法は、2009年にACSM(American College of Sports Medicine=アメリカスポーツ医学会)から発表された「レジスタンストレーニングのガイドライン」が基準となっています。しかし近年、筋肉のもととなる筋タンパク質の合成作用をミクロ単位で計測することが可能になると、トレーニング方法に対する新しい解釈が報告されるようになりました。

ACSMの『ガイドライン2009』では、効果的に筋肉を肥大させるためには、1RMの70%以上の高強度でトレーニングを行う必要があると報告されています。これに対して、現代のスポーツ運動生理学では、高強度でなくとも低強度で運動回数を多くし、総負荷量を高めることで高強度と同等か、それ以上の筋タンパク質の合成作用が得られることを示しています。

さらに、近年になってアミノ酸の安定同位体を用いる研究手法が構築され、運動強度と筋タンパク質の合成作用との関係が明らかになると、これまでとは異なる見解が報告されるようになりました。レジスタンストレーニングは、成長因子や代謝ストレスなどによって、筋細胞内のmTORC1やリボゾーム生合成を増加させることで筋タンパク質の合成作用を高めます(※1)。

このメカニズムを利用し、トレーニングによる筋タンパク質の合成作用を測定することにより、効果の高い運動強度を調べることが可能になったのです。2009年、ノッティンガム大学のKumarらは、異なる運動強度が筋タンパク質の合成作用に与える影響について調べました。その結果、筋タンパク質の合成率は低~中程度の強度(1RMの20~60%)までは運動強度に比例して増加しますが、高度の運動強度(同60%以上)では頭打ちになることがわかりました(※2)。

研究により解き明かされたトレーニングセット数の限界点

Burdらは筋タンパク質の合成作用に対する総負荷量の影響を調べるために、低強度・高回数と高強度・低回数でのトレーニング効果について検討しています。被検者はレッグエクステンションを1RMの90%で行う条件と、30%で行う条件の2条件を疲労困ぱいになるまで実施。トレーニング後24時間の時点で筋タンパク質の合成率を測定しました。

すると、90%で行う高強度トレーニングでは、疲労困ぱいまでの回数が5+-0.2回と低回数である一方、同30%の低強度では24+-1.1回と高回数でした。その結果、運動強度と運動回数をかけ合わせた総負荷量は、高強度の条件よりも低強度の条件で高くなりました。

また、筋タンパク質の合成率においても「低強度×高回数」の条件が「高強度×低回数」の条件を有意に上回ったのです(※3)。これらの結果が示すことは、1RMの30%のような低強度であっても、運動回数を疲労困ぱいまで行い総負荷量を高めることで、高強度と同等かそれ以上の筋タンパク質の合成作用が期待できるということです。2012年、Burdらはこれまでの研究から総負荷量が筋タンパク質の合成作用を増加させる理由として「筋線維活性」を挙げています。高強度×低回数ではタイプⅠ線維の動員で対応されます。

これに対して低強度×高回数で疲労困ぱいまで行うと、タイプⅠ線維に加えてタイプⅡ線維まで動員され、筋線維活性が増加し、筋タンパク質の合成作用が高まるのだろうと推測しています(※4)。これらの知見から現在では、トレーニング効果を最大化するためには、運動強度に運動回数をかけ合わせた総負荷量を考慮することが推奨されているのです。

2010年にKriegerらは、1960年から2009年までに報告された研究をもとにメタ解析を行い、1セットより複数セットを行うことによって、有意に筋肥大が生じることを報告しました。

また2012年には、ノッティンガム大学のKumarらがトレーニングの最適なセット数について、とても興味深い研究結果を報告しました。3セットと6セットの間には有意な筋タンパク質の合成作用の増加が認められず、セット数には「anabolic limit」、つまり筋タンパク質の合成作用の限界点があることを示したのです。この報告によって、3セットを超えるセット数ではトレーニング効果が頭打ちになる可能性が示唆されています(※5)。

(※1)Glass DJ, 2005
(※2)Kumar V, 2009
(※3)Burd NA, 2010b
(※4)Burd NA, 2012
(※5)Kumar V, 2012

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