数多くのドラマが見られた昨年の日本選手権。選手たちはどのような思いで、あの日のあのステージに上がったのか。ここでは男子ボディビル、女子フィジークの各2位から12位までの選手を単独取材。感動の舞台裏に迫る。
取材:藤本かずまさ 撮影:中島康介
2021年男子日本ボディビル選手権大会2位・木澤大祐「『これでいつでも悔いなく終えれる』という心境です」
2008年に4位になり、そこから11位まで落ちていく苦しい時代を経験しました。長い低迷から18年6位、翌年4位、今年は2位と復活することができ、競技者としてはよくないことかもしれませんが、「これでいつでも悔いなく終えれる」という心境です。
僕はいつも言っていますが、自分がチャンピオンになれる選手だとは思っていません。優勝する選手は、初めてファイナリストになったところから着実に順位を上げていき、チャンピオンになります。ですが、4位から11位まで落ちて、そこから復活して2位まで上がった選手は過去にいないかもしれません。そういう意味で、僕にしかできないストーリーを作れたのではないかと思います。2位までこられたことで、気持ちが一区切りついたというのはあります。
若いチャンピオンが誕生するのは、ボディビル界にとっていいことだと思います。相澤選手が21歳でチャンピオンになるというのはやはり夢があります。若い選手が憧れを抱く大会はやはり若い選手が活躍している大会です。これからはいい意味で新陳代謝が起こっていくと思います。
僕自身、やっていることはこれまでと変わりありません。調子が良いとか悪いとか、そういうこともありません。肉体労働を辞めて身体を休めることができるようになり、睡眠時間も安定してきて、それで良いトレーニングができるようになっただけだと思っています。
今年の試みとしては、例年は(大会2日前の)金曜日まで仕事をしていたのですが、今回は大会の1週間前からは仕事の空きを作って、身体を休めるようにしました。また、栄養学のスペシャリストでもあるYouTuberのKento君と相談しながらカーボアップを進めました。そのカーボ量がこれまで食 べていた量の2.5倍くらいあって、最後までは食べきることはできませんでした。あまりにも食べたので「甘くなってるんじゃないか」という不安はありましたが、そういった声は聞かなかったので成功だと思います。
「諦めずに挑戦を続ければ、いつか必ず結果が出る」、そういった言葉を胸を張って言えるようになったと思います。実際に、そうしたことを感じてくださった方もたくさんいらっしゃるようです。また、優勝ではなく2位なのに、「残念でしたね」とか「惜しかったですね」とかではなく、皆さん迷うことなく「おめでとうございます」と言ってくださいます。2位という結果でも僕のストーリーを知った上で応援してくれている方々にはとても喜んでいただけたと思います。
そういった全てをひっくるめて「やりきった」という気持ちになりました。もちろん「優勝」の2文字は頭の片隅に置いておかなければいけません。来年以降は挑戦者として、何もプレッシャーを背負うことなく向かっていけると思います。