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「よくある腕トレQ&A」腕を太くするために筋トレ初心者が知っておきたいこと【完全版】

トレーニングしているわりには腕が太くならない、バランス的に腕が弱いなど、悩みを感じているトレーニーも多いのではなかろうか。ここでは鈴木雅選手が腕トレに関する疑問をQ&A 形式で解説。初級者~上級者まで、段階的に腕のトレーニングを紐解いていく。(IRONMAN2018年7月号より修正引用)

取材・文:藤本かずまさ 監修:鈴木雅(ボディビル世界チャンピオン)

初級者編

Q1.腕を太くするために押さえておいたほうがいいポイントはありますか?
A1.追い込んだ筋肉を回復させてあげることが大事です

「トレーニングでしっかりと追い込むことが大事です。またそれ以外にも『栄養』『休養』も非常に重要になってきます。休養、つまり追い込んだ筋肉をちゃんと回復させてあげることが大事です。

胸のトレーニングでは補助筋として上腕三頭筋も動員されます。

また背中のトレーニングでは上腕二頭筋も使われます。胸と三頭筋を立て続けに鍛えるようなサイクルでは、まだ回復しないうちに三頭筋のトレーニングを行うことになってしまいます。背中と二頭筋も同様です。腕を太くしたい場合は、そのためのサイクルを考える必要があります。

また三頭筋は二頭筋よりも大きな筋肉です。腕の体積を増すという面では三頭筋を重視したほうがいいでしょう。三頭筋の外側頭は、あまり意識しなくてもプレス動作で負荷がかかってきます。二頭筋よりも発達させやすいと言えます」

Q2.どのように分割すればいいですか?
A2.大切なのは「腕をオマケのように扱わない」ことです

「初心者のうちは1回のトレーニングで全身を鍛えるメニューでもいいですし、上半身・下半身などの2分割、『押す種目』『引く種目』で分けるプッシュ・プルの3分割でもかまいません。ただ、ここで大切なのは『腕をオマケのように扱わない』ということです。

胸のついでに三頭筋、背中のついでに二頭筋を鍛える、という意識では大きな発達は見込めません。

オマケではなく、『腕を太くする』という目的意識を持ってトレーニングするようにしてください」

Q3.種目はどのように選べばいいですか?
A3.効かせやすい種目でいいと思います

「フォームが難しくなく、効かせやすい種目でいいと思います。例えばケーブルカールだったり、プレスダウンだったり。そういったベーシックな種目が導入部としてはいいと思います。ここで重要なのは、ターゲットにしている部位にしっかりと神経を伝達させるということです。神経伝達ができていないと、例えばバーベルカールを行ったとしても二頭筋を主導筋として使っているという感覚がなかなかつかめないと思います。言い換えれば、まずは動作に慣れることです」

Q4.重量設定はどのようにすればいいですか?
A4.伸展・収縮の意識ができる重量でセットを組みましょう

「基本的にはしっかりと効かせられる重量、カールでしたら二頭筋の伸展・収縮がしっかりとできて、負荷をちゃんとかけられる重量に設定すべきです。負荷をかけられていないと、いくら重たい重量を扱っても筋肉の発達には結びつきません。
傾向としては、三頭筋の種目のフォームを間違える人はあまりいません。ですが、二頭筋は誤ったフォームで行っている人が少なくはありません。二頭筋のトレーニングはカールによって負荷を『上げる』という動作になります。自発的にカールを行わないと、二頭筋は使われません。ただの『上げる』という動作になってしまいます。カールは『上げる』のではなく、『力こぶをつくる』という意識で行います。この意識ができる重量でセットを組みましょう」

Q5.初心者が陥りがちな間違いは何ですか
A5.「上げる」という意識はなるべく捨てたほうがいいでしょう

「二頭筋を動かすときに『肘を曲げて上げる』という動作を行う人が多いかもしれません。それでは二頭筋よりも、その下にある上腕筋に刺激がいってしまいます。

収縮しきった際に二頭筋が緩んでしまったら、力こぶで上げていることにはなりません。『上げる』という意識はなるべく捨てたほうがいいでしょう。

また、チーティング(反動)を使うときに、膝をクッションのように使って、飛び上がるようにしている人もいます。収縮させた際には、二頭筋でしっかりと負荷を受けなくてはいけません。チーティングを使って上げて、収縮時に力を入れずに、そのままストンと落とす。それでは、ただ全身を使って上げたにすぎません。

チーティングの使い方はとても大事です。上体がぶれてしまう体幹優先の使い方はNGです。ちゃんと腕で上げているかどうか。チーティングは、カール動作だけでは上げられない分を少し補うものです。あくまでも補助です。体が主導になるチーティングはよくありません。二頭筋の動きを補助するものでなければいけません」

Q6.チーティングは使ってもいいのですか?
A6.バーベルカールにおいてはターゲットとする部位をしっかりと鍛えるという面で有効だと言えます

「バーベルカールではチーティングが必要な場合もあります。スティッキングポイントと呼ばれるものがあります。上げるのがもっともキツい角度、カールの場合ですとダンベルやバーベルが体からもっとも離れているポイント、カールの場合ですと肘の角度が90度になっている局面です。

ここでは主導筋にもっとも負荷がかかっていると思われがちですが、実はそうではありません。関節の角度としてもっとも上げづらいポイントではあるのですが、90度から少し曲げたところで二頭筋には大きな負荷がかかります。つまり、それは関節にもっとも負担がかかるポジションの少し先にあるのです。

なので、スティッキングポイントを基本にして重量を設定すると、二頭筋にもっとも負荷がかかるポジションで最大の負荷を与えることはできません。また、そのポジションを基準に負荷を設定すると、スティッキングポイントで関節に大きな負荷がかかり、それ以上上げられなくなってしまいます。関節への負荷を軽減し、ターゲットとする部位をしっかりと鍛えるという面で、チーティングは有効だと言えます」

中級者~上級者編

Q7.フォームにも慣れてきました。ここからはどうような分割法が有効ですか
A7.腕の力をしっかりと発揮できるルーティンを考えるべきです

「腕がオマケになるようなルーティンにはしないことです。胸のトレーニングでは三頭筋は使われますが、二頭筋は関与しません。また背中のトレーニングでは二頭筋は動員されても三頭筋は使われません。中級者以上になってくると、腕の力をしっかりと発揮するために、胸のあとに二頭筋、背中のあとに三頭筋を行うなどの工夫は必要になってきます。

しかし、例えば『胸+二頭筋』『背中+三頭筋』と連続してトレーニングするとなると、胸の翌日に三頭筋がきてしまい、三頭筋の力を発揮しきれなくなります。

ただし、1日オフを入れ『胸+二頭筋』オフ『背中+三頭筋』オフ…とすると、非常に有効なサイクルを組めることになります。

4分割の場合は、『背中』『肩+三頭筋』『脚』「胸+二頭筋』とします。胸からは肩と三頭筋を離し、脊柱起立筋の疲労を防ぐために背中と脚も離します。

トレーニングがうまくなってくると、背中では二頭筋はあまり使わなくなってきます。本来はオフを入れたいところですが、『胸+二頭筋』の翌日に『背中』がきても、大きな問題はないと思います。

ですが、胸のトレーニングでは必ず三頭筋が動員されます。サイクルを組む際は胸と三頭筋は離したほうがいいでしょう」

Q8.腕が弱点の場合、高頻度でやったほうがいいのですか?
A8.全身を満遍なく鍛えている人は、あまり高頻度ではやらないほうがいいと思います

「私はあまりお勧めしません。神経伝達が鈍い、ということは腕ではあまり起こりえないと思います。毎日トレーニングを行うことのメリットは、いくつかあります。それは神経伝達をよくする、適切なフォームを身につけられる、などです。オーバーチーティング法といって、毎日トレーニングすることで『体を発達させないと』という意識を覚え込ませる方法もありますが、これはかなり特異な手法と言えます。

毎日トレーニングをすることで弱点が改善されたという例では、他の部位のトレーニングをあまりやっていないことが多いです。全身を満遍なく鍛えている人は、あまり高頻度ではやらないほうがいいと思います。

なかなか腕が発達しない理由は、強度が高いか、強度が低いか、そのどちらかなんです。ようは、やりすぎか、足りていないか。使用重量が重たすぎないか、逆に軽すぎないか、種目数が多すぎないかなど、原因を探ってみてください。何かしらの心当たりはあるのではないでしょうか」

Q9.適したトレーニング量は、どのように考えればいいですか?
A9.次のトレーニングを行ったときの感覚を目安にすればいいでしょう

「次のトレーニングを行ったときに伸びているかどうか、感覚がいいかどうかで判断していいでしょう。量が多すぎると、次回のトレーニングの際に感覚が悪かったり、『伸びる気がしない』と感じたりすることがあります。

ここ最近の傾向としては、あまり追い込まないと言いますか、あと1、2回はチャレンジできるんじゃないかと感じる人が多いように思います。また、今はいろんなマシンがあるので、それらをいろいろと試した結果、トレーニング量が多くなりすぎているといった方も見受けられます。

しっかりと追い込めているのであれば、3、4種目で十分だと思います。私は3種目を3セット、3セット、5セットで組んでいます」

Q10.やはりフリーウエイトを優先すべきですか? マシンも使用すべきですか?
A10.両方を活用すべきだと思います。バーベル、ダンベルだけでは補えない部分をマシンで補う、という考え方です

「フリーウエイトでは重力の方向に負荷がかかっています。カール動作、例えばコンセントレーションカールで収縮ポジションで力こぶをつくって静止するのは難しいです。そこでは上体を後ろに傾けてしまいがちですが、すると負荷は抜けてしまいます。
マシンでは、その収縮ポジションでの負荷を補うことができます。最大収縮時に効率よく負荷をかけることができるのです。

一方、フリーウエイトではターゲットとする二頭筋以外にも、ダンベルやバーベルを支える際に動員される橈とうこつ骨筋や上腕筋なども鍛えられます。そういった前腕の筋肉、二頭筋を下から押し上げてくれる上腕筋が発達しないと、腕の迫力は出てきません。

ただ、力こぶをつくるという点ではマシンはかなり有効です。フリーウエイト、マシンそれぞれの利点を理解して、その両方を取り入れるべきだと思います」

Q11.二頭筋と三頭筋、鍛える順番はどのようにすればいいですか
A11.私の場合、肘を痛めているので二頭筋から入ります。

「そこは人によって変わってきてもいいと思います。私の場合は肘を痛めているので二頭筋から入ります。三頭筋から始めると、肘に痛みが走ってストレッチポジションで負荷が抜けてしまうような感覚があるのです。また三頭筋はプレス動作でフルパワーで行うことが多いです。先に三頭筋のトレーニングをやると、二頭筋の力が発揮できなくなってしまうような感覚があります。肘を温める意味でも二頭筋を先に行います」

Q12.スーパーセット、ドロップセットなどの活用法は?
A12.ドロップセットは三頭筋には有効でしょう

「スーパーセットはその種目の強度が下がってしまうので、メイン種目では行わないようにしています。あくまでパンプなどを目的に行う場合はいいでしょうが、筋肉の発達には結びつかないんじゃないかとは思います。

ドロップセットは、三頭筋には有効でしょう。形状で分類すると、二頭筋は紡ぼうすい錘筋、三頭筋は羽状筋になります。羽状筋の特徴としては、筋線維が乳酸系のトレーニングにも反応しやすいということが挙げられます。また、高重量にも耐えられます。一方、紡錘筋は単調な刺激に反応しやすく、またパンプしても焼けつくような痛みは走りません。大胸筋と同様、そこまで多くの量をこなさなくても発達はします。三頭筋のトレーニングには高重量、高回数そのどちらも必要です。ドロップセットなどのテクニックを用いるのは有効だと思います」

Q13.二頭筋の幅、高さがほしいです
A13.握り方が重要になってきます

「フロントのダブルバイなどで腕を内側から見たときは二頭筋の短頭、バックのダブルバイなどで外側から見たときは長頭が重要になってきます。まずはそのどちらが弱いかを把握する必要がありますが、トレーニングでは短頭、長頭ともに『握り方』が重要になってきます。

短頭も長頭も起始部が肩甲骨にあり肩関節をまたいでいるため、その動きには肩関節が関わっています。肩関節が伸展している胸を張ったような状態では、短頭も長頭も収縮はしません。その状態のままカール動作をすると肘だけが曲がり、主に刺激されるのは上腕筋になります。

ですが、肩をすぼめるようにして行うことで、二頭筋は収縮しやすくなります。だから、肩関節を意識することです。

次に握り方です。親指を強く握ると長頭、親指を楽にすると短頭に効きやすくなります。

サムレスグリップは、あまりお勧めしません。手首が返ってしまい、二頭筋の肘のほうに刺激が入りますが、力こぶには入りません。また手首を返すと、前腕の橈骨筋にもっとも負荷がかかることになります」

Q14.アウトラインを強化したいです
A14.外側頭、長頭それぞれの仕組みを覚えて取り組んだほうがいいでしょう

「ボディビルのリラックスポーズなどで前から見たときに重要となるのは三頭筋の外側頭、ダブルバイなどのポーズを取ったときに映えるのは長頭になります。

三頭筋には外側頭、長頭、内側頭と三つの頭があり、そのそれぞれの仕組みも覚えておいたほうがいいでしょう。外側頭と内側頭は肘関節のみをまたいだ筋肉です。

一方、長頭は肩甲骨、肩、肘をまたいでいます。

外側頭は肘を動かすことによって作用します。外側頭を狙いたいときはプッシュ動作で肘を曲げ伸ばしするだけで効かせることができます。

長頭の場合は肩関節の伸展と肘関節の屈曲をしないとストレッチしません。収縮させるには、肩関節を屈曲、肘関節を伸展させます。つまり、プッシュではなく、エクステンションの動作になります。

外側頭はプッシュ動作、長頭はエクステンション動作、このポイントを押さえておかないと、三頭筋のなかでも発達する箇所、しない箇所が出てきます。特に肩関節が硬い人は肩が伸展しないので、長頭が弱いケースが多いです。肩関節の柔軟性にも気を配ったほうがいいでしょう。

三頭筋はライイングエクステンションで肘を痛める人が多いです。最初にストレッチ系種目を持ってきて肘を壊したという話はよく聞きます。エクステンション動作の種目は2種目め、3種目めに持ってくるのがいいでしょう。

Q15.鈴木選手が腕の種目を選ぶとすれば?
A15.POF法を用います

「二頭筋はバーベルカール、インクラインカール、ケーブルカール。三頭筋はクローズドグリップ・ベンチプレス、ライイングエクステンション、プレスダウンです。ストレッチ種目、ミッドレンジ種目、コントラクト種目を用いたPOF法ですね。

二頭筋のストレッチ種目であるインクラインカールを行うと、力こぶの丸みが変わっていくような感覚があります。ここでは短頭を主に狙います。シートには肩甲骨はつけますが、僧帽筋はつけません。僧帽筋までつけてしまうと体が伸長して、二頭筋はストレッチはされるんですが、収縮ポジションまで持ってこられず、初動で肩を使ってしまうからです。

シートの角度はその人の肩の柔軟性によって変わってくると思います。45度より高い角度にしないと、肩に効いてしまいます。

ストレッチポジションでは手首を少し回内(逆ハの字)させます。ここで手首を返しすぎると、長頭に刺激がいき、短頭への負荷が抜けてしまいます。

三頭筋の外側頭を狙うプレスダウンでは、足幅を狭くしすぎると収縮させづらくなります。広くしすぎると、今度は肩が伸展して負荷が逃げてしまいます。ですのでスタンスは肩幅と腰幅の間くらいにします。

バーは手首の近い位置で、軽く上からかぶせるような感じで握ります。ストレッチポジションでは力を抜いて三頭筋がストレッチできるようにし、また斜め前を向いて肩が伸展しないようにします」

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鈴木 雅
1980年12月4日生まれ。福島県出身。身長167cm、体重80kg ~83kg。株式会社THINKフィットネス勤務。ゴールドジム事業部、トレーニング研究所所長。2004年にボディビルコンテストに初出場。翌2005年、デビュー2年目にして東京選手権大会で優勝。2010年からJBBF日本選手権で優勝を重ね、2018年に9連覇を達成。2016年にはアーノルドクラシック・アマチュア選手権80㎏級、世界選手権80㎏級と2つの世界大会でも優勝を果たした。DMM オンラインサロン“ 鈴木雅塾”は好評を博している。


執筆者:藤本かずまさ
IRONMAN等を中心にトレーニング系メディア、書籍で執筆・編集活動を展開中。好きな言葉は「血中アミノ酸濃度」「同化作用」。株式会社プッシュアップ代表。

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